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真夏の昼の夢

先日の『リハビリツーリング』。無事帰ってきたものの、わずか70kmほど走っただけなのに、結構腰に張りを感じました。やっぱりまだ長距離は厳しそうです。

そこで考えました。

ツーリング先で疲れたら、温泉に浸かって体を癒し、また帰ってくればいいんじゃね?

よし、湯治を兼ねて、温泉へツーリングだ!

という事で、近場の温泉へ出かけてきました。

(まあ、温泉へ日帰りツーリングなんて、しょっちゅうやっている事なので、いまさら湯治もなにもないのですが、、、(笑))

ここは公共の温泉で、入浴料は710円/日と格安。さらに地元の住民は\500/日らしく、そのためか、車でしか行けないような場所にあるにもかかわらず、いつも結構賑わっています。

この日も駐車場は車でいっぱい。にも拘わらず、館内にはいると人影はまばら。料金を支払って脱衣所に入ってもほとんど人が居ません。

「ん?なんで人が居ないんだろう?」

と不思議に思いつつ浴室へ入ると、なんと湯船には爺様がびっしり!

足が伸ばせないほどの密度で沢山の爺様が湯につかっていました。

写真はあくまでイメージです。(失礼!)

ここの温泉は湯温が低く、一番大きな湯船は38℃。元湯が注ぐ一番人気の小さな湯船なんかは、わずか34℃しかありません。

なので、入っていようと思えば、いくらでも長湯が出来るわけで、爺様たちは一向に動く気配がありません。じっと目をつむり、口を開け、寝ている、というか、「ホントに生きてんのか?」と思う程じっと動きません。

しょうがないので、僕は加温されている42℃の湯船にひとりで浸かっていました。

***

体を洗ったり、外の露天風呂に浸かったりして、40分ほど粘っていると、ようやく元湯の爺様たちが動きだし、その空いた隙間にようやく潜り込む事ができました。

34℃というと体温より低いわけで、まるでプールに浸かっているような感じです。

***

狭い小さな湯船の中で、爺様は皆目をつぶってじっとしているのですが、ひとりだけ、ずっとしゃべっている爺様がいました。目の前に座る、顔見知りと思われるオジサンに、ひたすら話しかけます。

曰く「親戚のオヤジさんは大学で教員をしていて、いつも世界中を飛び回っている」とか、「その娘の女の子は○○大学を出て、今はロシア大使館に勤めている」とか、ひたすら親戚自慢(?)が続き、やがて親戚の話題が尽きると、今度は”知り合い”にまで自慢話は広がり、「知り合いの○○さんは大学を出た後、超大手コンピューターメーカーに入り、今はもうリタイアしたけれど、それでも月に2,3日は顧問としてまだ働いている。」・・・みたいな話を長々と話していました。

その間、聞き役のオジサンは、ひたすら「ああ、そうですか。そうですか。」と相槌を打ち続けていました。、話し手のおじいさんと聞き役のオジサンの間柄はわかりませんが、親戚や知り合いの自慢話を延々効かされても面白いとは思えず、僕は「オジサンも大変だなあ~」と聞き役のオジサンに同情していました。

***

じいさんの昔話や自慢話というのはなかなか終わらないもので、聞いている方としてはつらいものがあるけれど、話す方は楽しいのか、なかなか終結には至らず、気づくと最初の話に戻っていたりします。

でもまあ、僕も世間的に見れば立派な『オジサン』なわけで。

あと2~30年もすれば、湯船につかるお爺さんと同じように、若者に昔話をくどくどとする様になるのかもしれません。

*******

「にいちゃん、にいちゃん。 あの表に停めてあるバイクはにいちゃんのか?」

「えっ?、ええ、そうですけど。」

「おおそうか。かっこええバイクじゃなあ。あれ、どこのバイクじゃ?」

「ホンダですけど。」

「おお、ホンダかあ。ホンダもええなあ。

実はな、わしも昔、大きなバイクに乗ってたんじゃ。しかもハーレーじゃぞ、ハーレー!」

「えっ? ハーレーですか。 ハーレーってなんですか?」

「ナニ!? おまえ、バイクに乗ってるくせしてハーレーを知らんのか!? ハーレーじゃよハーレー! バイクの王様じゃぞ。」

「はあ、そうなんですか。」

「なんだ、最近の若者はハーレーを知らんのか?  まあ、若いのにはなかなか手の届かないバイクじゃからな。

わしの乗っていたハーレーは1200ccもあってな。もちろん大型じゃよ。大型。しかもわしなんか『限定解除』したんじゃ。教習所でとったんじゃないぞ! 知ってるか? 限定解除。」

「限定解除・・・ですか? いや、知りません。」

「限定解除っていいうのはな、落とすための試験でな、受かるのは東大合格よりも難しい、なんて言われてだな・・・・」

「はあ。」

「・・・まあ、限定解除の話はいいとして。 お前のあのバイクは何CCじゃ?」

「何CC? 何CCってなんですか?」

「なんじゃと? 排気量じゃよ、排気量。エンジンの排気量があるじゃろう!」

「ああ、エンジンだったんですよね。昔のバイクは。すいません、僕のはモーターなので。」

「モーター!電気バイクか。そうか。モーターじゃ排気量なんてないわな。

じゃあ、あのモーターは何馬力くらいあるんじゃ?」

「ばりき?・・・ですか? えっ、馬力? いやあ、わかりません。

ああ、パワーですか? たしか・・・150kW位だったと思います。」

「150kW・・・すごいのかすごくないのか、ちっともわからんな。

電動バイクっていうことは、バッテリーでうごくんじゃろ?」

「ええ、そうです。」

「どのくらい走るんじゃ?」

「えっ?どのくらい走るって、どういう意味ですか?」

「はぁ?じゃから、バッテリーなんじゃろ? 一回の充電でどれくらいの距離、走れるんじゃ?」

「さあ、どれくらい走れるんでしょうねえ・・・」

「はああ? なんでわからんのじゃ。お前のバイク、充電はせんのか??」

「いや、もちろん、充電はしますよ。家のコンセントで、3か月に一回くらいかなあ。」

「・・・・そんなにもつのか! すごいのお。わしの若いころは一回の充電で20km位しか走らなくてなあ、出川哲郎が苦労しておった。」

「でがわ・・・だれですか?それ。」

「・・・」

「あっ!思い出した!思い出しました。たしか、『ファーウェイ・ダビッドソン』ですよね。」

「なんじゃそれは。『ファーウェイ』じゃなくてハーレー。『ハーレー・ダビッドソン』じゃ!」

「いえ、ですから。ファーウェイがハーレーを買収して、『ファーウェイ・ダビッドソン』になったんですよ。2025年位だったかなあ?」

「『ファーウェイ・ダビッドソン』じゃと!なんじゃそれは。ファーウェイって、中国のか?ファーウェイって言ったらスマホのメーカーじゃないのか!?」

「そうですよ。そのファーウェイです。」

「なんで携帯電話のメーカーがハーレーを買収したりするんじゃ!?」

「いやあ、だって、今のバイクはバッテリー駆動で、GPSコントロールですから。」

「・・・・・。」

・・・なんていう夢を見ながら、冷たい湯船でついウトウトしていました。

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