春うららかな、というにはちょっと肌寒い日。いつものように道志みちを走っていた。
昔は知る人ぞ知る、という感じの道だったけれど、今ではすっかり有名というか、関東のバイク乗りのメッカと化している。
道の駅で昼ご飯。かきあげそばと一緒に食べた「鮎飯」は店長のオススメと書かれていて、思わず買ってしまった。焼いた鮎をご飯と一緒に炊き上げた後、鮎をほぐした(と思われる)その炊き込みご飯は、やや薄味だったけれど素朴な味でなかなか美味しかった。
「さあ、そろそろ帰ろうか」と元来た道を戻り始めた。
我がスポーツスターの前には一台の軽ワゴン。速くもなく、遅くもない。いいペースで走っていたので、その後ろをついて走る。のどかな春の日。桜は散り始めてしまったけれど、雲一つない快晴。こんな日はのんびりまったり走るに限る。
ところがその軽ワゴンは短い直線で左にウインカーを点け、先に行けと合図をおくってきた。そんなに車間を詰めてはなかったのだけれど、やっぱり後ろに付かれるのが嫌だったのかもしれない。
追い越す瞬間、やや大げさに”ペコリ”とヘルメットを下げて前へ出た。
こうなると多少ペースを上げないと後ろの車に申し訳ない気がして、ちょっと大きめにアクセルを開けた。
しばらく走ると、7,8台のバイクの列に追いついた。車種はバラバラ。マスツーリングなのか、たまたまバイクが連なったのかはわからない。
先頭に遅い車がいるらしく、かなりゆっくりなペースだったけれど、大人しくその後ろについた。
対向車からみれば、僕もこの ”ツーリング集団の一員” に見えることだろう。
最後尾のバリオスはどうやら女の子のようだ。ヘルメットから長めの茶髪が見えている。
上半身はモコモコのジャケットを着ているのに、下半身はヒザ下までロールアップされたハーフパンツだ。安全云々という前に、寒くないんだろうか? いや、下手に車体に触れたら火傷しそうだ。
どうみてもマスツーリングで「しんがり」を任されるタイプには見えないから、すくなくとも彼女はこの集団の一員ではないようだ。
もっとも、だれひとり ”集団の一員” じゃないかもしれないけれど。
それでもやはり「我々」はマスツーリング集団に見えるのか、ひっきりなしに対向車からピースサインが飛んでくる。いや、今は「ヤエー」って言うんだっけ。
僕は自分からは滅多に「ヤエー」はしないけれど、やられたらやり返す(言葉の使い方がちょっと違う?)ようにしている。あんまり大げさに両手を振るようなのは好きじゃないが、軽く手を振って挨拶されるのは、同じバイク乗りとして悪い気はしない。
しばらく ”マスツーリング” していると、前からやはり女性とおぼしきライダーが走ってきた。
ヤマハのクオーターに乗った彼女もさわやかに手を上げて合図を送っている。
「われらマスツーリング集団」のメンバーも、全員が手を振って応える。
そんなメンバーひとりひとりに、ヤマハの彼女は嬉しそうに手を振って応えていた。
そしてその集団のブービーに女性ライダーが居ると気づいた彼女は、我がチーム(?) 唯一の女性ライダーに向かって、ひときわ大きなアクションでヤエーを送った。
うちの女子もそれに応えて大きなヤエーを送った。
やはり女性同士通じるものがあるのだろう。
そして僕。僕も当然手を振った。
もちろん前の女性のように大きくはないけれど、はっきりと見えるように爽やかに左手を振った。
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スルーされた。
やはりハーレーに乗ったオッサンは、チームの一員とは認めてもらえなかったようだ。
なんか寂しい。
なんかむなしい。