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コラム 教習所の思い出(その2)

二度目の教習所は大型二輪免許取得のために通った。

最初は大型など取る気はなく、” 中型で十分 ”、と思っていた。

ところが当時、ホンダから発売された「BROS」というバイクが欲しくなり、
価格を調べると 400cc版の「Product TWO」 と 650cc版の「Product One」 とでは、
わずか2万円しか値段の差がない。

”どうせなら650ccが欲しいなあ”

と思ったのが、大型取得のきっかけだった。

BROS

当時はまだ教習所では大型は取れず、中型から大型へ「限定解除」するには、運転免許試験場で実技検定を受けて、それに合格しないともらえなかった。
いわゆる「一発試験」というやつで、当時の教習所の「大型教習」は、あくまでその受験のための練習であった。
***

わざわざ教習所に通ってまで限定解除しようという人は少数派だったようで、
大型教習をやっている教習所自体、非常に少なかった。
いろいろ探して、隣県にあるオートバイ専門の教習所に通うことにした。
実際、教習が始まっても大型コースは人数が少なく、中型の受講生が10~15人くらい一度に教習を受けている時でも大型はせいぜい2~3人。教官とマンツーマンという時も少なくなかった。
一発試験の為の練習なので、内容は結構スパルタであった。
教官は容赦なくコース内を飛ばし、最初はついて走る事すらできなかった。
1時間、延々と8の字走行だけをやる事もあった。

更に途中からは「バンク角に慣れるため」と、坂道で8の字走行をやらされた。

上りから下りへのターンは倒れこみそうな感覚に襲われ、かなりの恐怖だった。
あるとき、あまりに下手くそな僕の8の字走行を見かねた教官が、
「よし、じゃあこれに乗って」
といって125ccの教習車を持ってきた。

教官曰く、パワーがない分アクセルワークにメリハリをつけないと走れないので、いい練習になる、と説明された。
小型バイクで延々8の字を練習していると、中型コースの教習生たちから

「あの人、なんで原付に乗らされてるんだろう?

という声が聞こえてくる。
・・・別に罰ゲームでやってるわけじゃないんだけど。(涙)

***

思えばここでも結構孤独だった。(僕の性格の問題かなあ?)
中型教習生同士はみんな直ぐ仲良くなり、お互いに教習内容の話をしたり、バイク雑誌を見たりして和気あいあいとしている。
が、大型教習生に対しては、なんとなく
「あの人は自分たちとは違う人だから」
という空気があった。
ここの教習所には待合室にスタンドで固定されたバイクが置いてあり、自由にまたがってギアチェンジの練習なんかができるようになっていた。

数人がバイクの周りに集まって、「あーでもない、こーでもない」と言いながら楽しそうにギアチェンジの練習をしている。
「まずクラッチ切ってからギア上げるんだっけ? アクセルもどすのが先だっけ?」
と言いながらバイクに跨っている人と、一瞬目が合う。
「・・・。」
「・・・。」
「あ、どうぞ。」
と言って、僕にバイクを譲る。
いや、そうじゃないんだけれど・・・と思いつつ、しょうがないので 「あ、どうも。」 といってバイクにまたがる。
跨りたかったわけじゃないんだけれど・・・。
周りの視線を感じる。
仕方なく、クラッチを握って、ギアをカチャカチャとやって、
”まあ、こんなもんかな ”
という顔をしてバイクを降りる。
(一体何が  ”こんなもん” なのやら。)

***

ある日、やっぱり一人でコースを走っていると、一本橋の前で中型教習の人たちが集まって教官の説明を聞いていた。

「ニーグリップが甘い人が多い。あと、視線を落とさず前に。」
「中型は7秒以上だけど、大型は10秒以上でわたらないとダメなんだぞ。」

などと説明していた教官が、ふと僕に気づき、
あ、いいよ。渡って。」 と言った。

”えっ?今 わたんの!?
視線が一斉に僕に集まる。教官もなぜか説明を中断する。
・・・これは、絶対に落ちれない
後にも先にもこんなに緊張した一本橋はなかった。

7秒、8秒、9秒。・・・

太ももがプルプル震えるほどニーグリップをし、必死で視線を前に向け、
ガチガチになりながらもなんとか渡りきった。

その瞬間、見学者達から、「ホゥ~~。」 というため息のような声が漏れた。
次の日は内モモが筋肉痛 だった。
***

教習が半分ぐらい終わったとき、教官が

「一度 場慣れの為に受けて来て。・・・落ちると思うけど。」 といった。
落ちるのに受けるの?と思いつつ、免許試験場で試験を受けた。当然落ちた

# 一本橋を渡っている途中でどんどんエンジンの回転が落ち、エンストした。
# あわててクラッチを切り、必死にセルボタンを押したがエンジンは再始動せず、そのままなすすべなく橋から落ちた。
試験には落ちた。 ・・・が、僕はここで大いなる勘違いをしてしまったのだ。

”これ、もう一回受けたら受かるんじゃね?

周りの受験生は明らかに練習不足の人が多かった。というか、一発試験はほとんどの人が「一発」で受けに来ていて、大型教習を受けて受験に来る人はごく少数派だったのだ。

大型に乗るのが初めて、という感じで、スタートして最初のUターンでこける人が結構いた。

それに比べれば、ぼくはまだうまい方・・・と思ってしまったのだ。(自分もまともに8の字走行出来ない事も忘れて・・・)

勘違い野郎はすぐに次の受験を申し込み、そして当然落ちた

次も落ち、その次も落ちた。

練習していないのだから当たり前である。
でももう教習所に行く気がせず、練習もしないまま次の受験を申し込む。

すると5回目の受験にして初めてコースを完走し、そしてなぜか合格した。
***
合格を報告しに教習所へいったら、教官はとても驚いていた。

「へぇ~受かったの?おめでとう。
でもせっかくだから、残りの教習もちゃんと受けてね。」
教習代は全て前払いで支払い済みだった。
「はい、わかりました。」 と言いながら、僕は二度と教習を受けることは無かった。
本当の運転技術を学べる訓練を、専用のコースと教習車を使って、
ベテラン教官にマンツーマンで教えてもらえる機会なんてそうあるものではない。
今考えると、なんとももったいない事をしたものである。
P.S.今でも Uターンは苦手です。

コラム 教習所の思い出(その1)↓

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