ハーレーのプラグっていつ交換するの?
乗り始めから3年経ち、初めての車検をユーザー車検で終えた我がハーレー スポーツスター(XL1200CX ロードスター)。
車検は自分で通しましたが、それまでは毎年ディーラーで1年点検を受けていました。
そのたびに不思議だったのが、なぜか一度もプラグ(スパークプラグ)を交換されない、という事。
バイクのプラグ交換は3000km~5000km毎、というのが「常識」だと思っていたのですが、1年点検でも2年点検でもプラグは交換されませんでした。
ひょっとしてプラグは点検してないのかな?とも思いましたが、いつも点検からバイクが帰ってくると、ちょっと錆びていたプラグの六角部分がきれいに磨かれて帰ってくるのです。ちゃんと外してチェックしている証拠。
メカニック氏に「プラグって交換しなくていいの?」と聞くと、「まあ、車検の時ぐらいでいいんじゃないですか?」と言われました。
そんなもんなんですかね?
バイクのプラグ交換は3000km?それとも4万km?
先ほども書きましたが、昔、ぼくらがバイクに乗り始めたころは、プラグの交換時期は3000kmから5000kmぐらいと言われていました。
今でもスパークプラグメーカーのホームページを見ると、二輪車のプラグ交換時期は3000~5000kmと書かれています。
NGK
DENSO
一方で、四輪車なんかでは
「プラグ交換は10万キロごと」
とか
「普通に乗っている限り、廃車まで交換する必要なんかない」
なんていう話も聞きます。
バイクでも、たとえばホンダのメンテナンスのページなんかを見ると、
「40,000km毎(ただし、白金およびイリジウムプラグのみ)」
と書かれていたりします。
HONDA MAINTENANCE NOTE
また、ハーレーの場合は
新車購入後12ヶ月(または8,000km)で点検、必要があれば交換
24ヶ月(または16,000km)で交換
というのが推奨されています。
なぜ車両メーカーとプラグメーカーでこうも数字が違っているのでしょうか?
エンジンの形式や使い方によってプラグの寿命も変わってくるのはわかりますが、3000kmと4万キロといったら13倍ですもんね。
イリジウムプラグは長寿命なの?
プラグ交換時期の話をややこしくしているのが「イリジウムプラグの寿命」です。
電極に硬いイリジウムを使った「イリジウムプラグ」は、通常のプラグより電極の摩耗が少ない。だから長寿命なのですが、すべてのイリジウムプラグが長寿命かというとそうではありません。
実はイリジウムプラグには
「長寿命タイプ」と
「寿命は通常プラグと変わらないタイプ」
の2種類があります。
この辺の話はNGKのホームページに詳しいのですが、簡単にいうと
中心電極にのみイリジウムを使っているのが「片イリジウムタイプ(=通常寿命タイプ)」。
これに対し、中心電極だけでなく、接地電極側にも白金などの貴金属チップを貼って摩耗しにくくしたのが「両貴金属タイプ(=長寿命タイプ)」です。
長寿命タイプは通常タイプの5倍ものロングライフなんだそうです。
なので、プラグの交換時期を語る時は、「長寿命タイプのイリジウムプラグ」と「それ以外のプラグ」では分けて考える必要があります。
プラグの寿命を左右するのはエンジン回転数
プラグの寿命の問題を考える時、一番ポイントとなるのはそのエンジンで走る時の回転数(常用回転数)です。
プラグは点火(スパーク)する事で徐々に電極が減っていき、やがて寿命を迎えます。
当然、距離を走れば走るほど沢山点火するわけですから、走行距離に比例してプラグが減っていきます。だからプラグの交換時期は「走行○○km毎」と距離を目安にしています。
ところが、車種やエンジンによって、同じ距離を走る場合でもエンジンの常用回転数は違ってきます。
四輪車の場合、普段街中を走っている時のエンジン回転数はせいぜい1000~3000回転/分ぐらいでしょうが、バイクなら4000~8000回転ぐらいは回っているでしょう。軽自動車ならその中間くらいでしょうか。
同じ距離を走る場合でも走っているときのエンジンの回転数が違えば、その間に火花を飛ばす回数が変わってくるわけですから、自ずとプラグの消耗度合いも違ってきます。
これがバイクと四輪車でプラグの寿命が大きく異なる主な理由です。
(その他、バイクの方が総じてエンジンの圧縮率が高い、という理由もあると思います。高圧の中で火花を飛ばすのはより大きな電圧が必要となるからです。)
問題は、二輪の場合(四輪もそうかもしれませんが)、同じバイクと言っても車種によってかなり常用回転数に幅がある、という点です。
ハーレーのように、ほとんど四輪の乗用車と変わらない回転数で走るバイクもあれば、250cc四気筒エンジンのように、1万回転/分を軽く超えて回るバイクもあります。
当然、1万回転を常用して走るバイクは、2500回転で走るバイクの4倍 放電することになります。その分プラグの寿命は短くなりますよね。
つまり、プラグの寿命を語る場合、ハーレーと250ccマルチエンジンのバイクを一つの括りで語るのはちょっと無理があるのでは?ということなのです。
車両メーカーの場合は、それぞれのバイクごとにプラグ交換タイミングを指定できるので、常用回転数の高いバイクは短く、常用回転数の低いバイクは長く交換時期を設定できます。
一方、プラグメーカーはどんなバイクでも問題ない交換時期を「二輪車のプラグ交換時期」として提示する必要があるので、どうしても短めになるんだと思います。
じゃあプラグの交換時期はどう判断するの?
車両メーカーがそのバイクのプラグ交換時期を指定している場合は、それに従えばいいと思います。
車両メーカーの指定が無い場合は、定期的にプラグをチェックして判断、という事になりますが、なかなかアマチュアが判断するのは難しい面もあると思うので、信頼できるバイク屋さんに定期的に見てもらうのがベターです。
” 信頼できるバイク屋が身近に居ない!”という場合はどうするか。
僕なら・・・ですが、
-
いまどきのプラグは優秀で、5000km程度で走れなくなるほどプラグが消耗する、という事はほとんどないと思うので、まずは8000km~1万kmほど乗ってみてプラグを交換します。
-
それで、明らかに性能の向上(始動性・加速力・燃費の向上、アイドリングの安定、振動の低下など)が感じられたら、次はもう少し短いスパンでプラグを交換してみる。
-
逆に全く変化が感じられなかったら次回は1万~1.5万kmで交換してみる。
こうして自分のバイクと使い方におけるプラグの寿命を確認していけばいいんじゃないでしょうか。
もし2万Kmを超えても問題ない場合は、定期的な交換を忘れないよう、(2万キロ未満でも)車検毎に換える、というのもいいかもしれませんね。
(↑ あくまで自己責任でお願いします。もちろん、メーカー指定がある場合はそちらを優先。)
スポーツスターのプラグを交換してみる
僕のスポーツスターは昨年11月に3年目の車検を終え、走行距離は約2万キロ余り。この間、スパークプラグは一度も交換していません。
そういえば、最近、なんとなく加速力が鈍ってきたような気も・・・(ホントか?)
本当に寿命かどうかはともかく、まあ、このあたりで一度プラグを交換してみてもいいかな?と思い、プラグ交換をしてみることにしました。
今、僕のスポーツスターについているプラグはハーレーダビッドソンの純正プラグ(6R12)。
これまで特に問題も無かったし、今回も同じプラグでも全く問題ないのですが、せっかくのプラグ交換。同じプラグも芸がない。
実は僕にはいちど試してみたいスパークプラグがありました。
それが、ブリスク(BRISK)です。
ブリスクはチェコで生まれたメーカーらしいのですが、ランボルギーニと共同開発し、OEM供給しているプラグのメーカーとしても有名なんだそうです。
その独特の電極の構造により優れた着火性能を誇るらしく、一部マニアの間ではかなり話題になっているプラグです。
ぼくもその存在自体は10年ほど前から知っていましたが、実際に試したことはありませんでした。けど、どうもハーレーに使うとかなり効果的らしい・・・という噂を耳にし、がぜん興味が湧いてきました。
では、さっそく装着を・・・と思ったのですが、、、。
既に2万km以上使った純正プラグを交換して、” すごい良くなった!! ” と言ってみたところで、「そりゃー2万Kmも使ったプラグを交換すればよくなって当然」となって、いま一つ説得力に欠ける気がします。
そこで、まずは標準的な新品プラグに交換し、その後に「ブリスク」を試してみる事にしました。幸いスポーツスターはプラグが露出していて交換はし易そうです。
いま使っているプラグはハーレーの純正プラグ(6R12)ですから、厳密に言えばこれの新品に交換すべきなんでしょうが、近くのバイク用品店には置いてなかったので、NGKの互換品=DCPR7E に換えてみる事にしました。これなら実験として使い捨てしても大した出費にはなりません。
早速近くのバイク用品店で購入。二本で1650円(税込)也。いやぁ二気筒エンジンはプラグ代も安くていいです。
いろんなハーレーパーツの通販サイトを見ると、スポーツスター用のプラグとしてこのDCPR7Eが紹介されているのですが、何故かNGKのサイトにはイリジウムプラグのDCR7EIXしか載っていません。単に高いイリジウムプラグを推したいだけなのか、それとも他に理由があるのでしょうか?
実践!スポーツスターのプラグ交換方法
では実際にスポーツスターのプラグを交換してみます。
プラグ交換にはプラグレンチが必要です。
自分でプラグ交換するのって何年ぶりだろう?と思いつつ、家にあるプラグレンチを探すと、こんなに沢山有りました。(笑)
スポーツスターの純正プラグ、及び、NGKのDCPR7Eに合うプラグレンチは5/8インチ(16mm)サイズになります。
5/8インチのプラグレンチは2本有りましたが、何故かプラグにうまくハマるものとはまらないものがありました。
プラグレンチには外したブラグが抜け落ちないように、ゴムやマグネットでプラグを保持するようになっているのですが、どうもこのゴムがうまくはまらないものがあるようです。
では作業開始。まずはプラグキャップを外します。コードを引っ張ると抜ける恐れがあるので、キャップをしっかり持って引っ張ります。
プラグを少し緩めたら、プラグを完全に抜き取る前に、再度エアダスターで清掃します。
プラグ周りが錆びていたりすると、錆が落ちてプラグホールから入る可能性もあるからです。
プラグが緩んだら、手で回して外します。
まずプラグを手でねじ込みます。いきなりプラグレンチでねじ込むと、プラグが傾いていたときにネジ穴を痛めるからです。
手で回らなくなったらプラグレンチで締め込むのですが、ここでもいきなりしめ込まず、プラグのネジが台座部分までちゃんとねじ込まれているかを確認してからねじ込みます。
プラグをしめ込むときは、オーバートルクにならないようにトルクレンチを使うのが正しいのですが、ネジ部にグリスを塗ってあると、指定トルクで締めてもしめ込み過ぎになる可能性があるため注意が必要です。
DCPR7Eはネジ径がφ12mmなので、締め付けトルクは 15~20N・m(1.5~2.0kgm)ですが、これはあくまで無潤滑の場合です。
(プラグメーカーのホームページを見ると、プラグにはグリスを使わないように、と書いてあります。オーバートルクでネジ穴を壊すことを危惧してのこと。グリスを塗るときは自己責任で。)
ここは角度法でトルク管理をします。これならグリスを塗っていても問題ありません。プラグメーカーの指定に従って、プラグが台座についてから、約1/2回転=180度 締め込みます。
(新品プラグの場合。再利用の時は1/12回転=30度)
***
ここでマニアは燃焼室内でのプラグの向きをそろえたりします。
プラグの接地極の開いている側を吸気ポートに向けたり、燃焼室内で早く混合気が燃えるよう、燃焼室の中心方向に向けたりします。
あらかじめプラグの接地極の向きをマーキングしておいて揃えるのですが、ねじ込んだ時の電極の向きは変えられないので、向きを変えるためのスペーサーが売ってたりします。
北川商会HP(ホーム>パーツ>電装系)
僕はそこまでやりませんけどね。
(本当に体感できるほどの効果があるんでしょうか?)
***
プラグを着けたらプラグキャップをしっかりはめ込んで完了です。
プラグ交換後のインプレッション
早速エンジンをかけてみます。
バッテリーは充電しておいたので、セル一発でエンジンは始動しました。
ドッドッドッドッドッ・・・
明らかに音が違います。
パルス感がしっかりしていて、一発一発がハッキリしています。
跨って走ってみると、いつもより力強く加速するような・・・気がします。
”それってただの プラシーボ効果じゃないの? ”
と言われるとそんな気も・・・(笑)
この日はかなり気温が低く、最高気温でも10℃を下回っていました。
冬になって気温が下がれば、空気の密度が上がるので、エンジンはパワフルになります。
(一説によると、最高出力で10%以上もパワーアップするそうです。)
プラグ交換で力強くなった気がするのも、実際は気温による影響の方が大きいのかもしれません。
だとすると、実はプラグ換えてもあんまり変わっていないのかも・・・という程度の差です。
逆に言えば、2万キロ走ってもあまりプラグは消耗していなかった、とも言えます。
2万キロ走ったスポーツスターのプラグは・・・
実際外したプラグをみるとこんな感じ。
まだまだ使えるような気もしますが、多少 中心電極の角が丸まっている気がします。
この感じからすると、ハーレー推奨の16,000kmという交換時期は結構いい線だと思います。
次回は高性能プラグにチャレンジ!
これでプラグは新しくなりました。このプラグで少しだけ走ったら、次は高性能なプラグを試してみたて、標準プラグと比較してみたいと思います。
2020年4月5日 追伸:
NGKプラグに交換後、約1000kmを走りました。そこでいよいよ「BRISKプラグ」を試してみました。するとこれがすごかった! よければこちらもお読みください。
↓↓↓