VPクラッチでクラッチが軽くなる仕組みとは・・・
前回、クラッチを軽くするためのいくつかの方法を紹介しましたが、その中でも、特にハーレーにおいて決定版と言える方法が「VPクラッチを取り付ける」、という方法です。
価格:36,300円 |
※上記はスポーツスター用ではありません。
VPクラッチとは「Variable Pressure clutch」の略で、直訳すれば「可変式圧力クラッチ」でしょうか。バリアブルとはどういう意味なのか? なぜクラッチが軽くなるのか?
VPクラッチは「Tak’s Performance Parts」というメーカーが作っているパーツです。そして「Tak’s Performance Parts」は愛媛県のハーレー正規ディーラー「ハーレーダビッドソンブルーパンサー」で代表を務める重松 健さんという方が起こした会社です。
この重松 健さんという方は、アメリカでも活躍したドラッグレーサーのトップフューエルパイロットで、VPクラッチにはこのドラッグレーサーの技術が応用されているそうです。
VPクラッチによってクラッチが軽くなる仕組みは簡単。ノーマルより弱いクラッチスプリングを使うことでクラッチを引く力を軽くしています。
ただし、単にクラッチスプリングを弱くすると、エンジンの回転を上げたときにクラッチ板同士を密着させる力が不足し、クラッチが滑ってしまいます。
弱いクラッチスプリングを使いながらも、エンジンが高回転になったときには滑らないようにがっちりクラッチ板同士を押さえつけるのがVPクラッチです。
その仕組みは具体的にどうなっているかというと、クラッチが回転することで発生する遠心力をクラッチ板を押す方向の力に変換する機構がついています。
言葉にすると難しいですが、実際の仕組みは結構簡単です。
クラッチとともに回転する円盤に真ちゅう製の重りが付いていて、これが遠心力で広がろうとすると、クラッチ板を抑える方向に力が加わります。
現物を見てみましょう。
遠心力に応じてクラッチ板を押す力が可変します。エンジンの回転数が低い時(アイドリングなど)はクラッチを押す力が弱く、回転数が上がると強く働くようになっています。
つまり、アイドリング時はクラッチが軽く、回転が上がるとしっかり圧着されてクラッチ板が滑るのを防ぐわけです。
単純といえば単純ですが、この仕組みを狭いスペースに収め、回転数に応じて適切な力がクラッチ板にかかるよう、重りや位置を設定するのは、なかなかノウハウがないと出来ないんだろうと思います。
VPクラッチを選んだわけ
VPクラッチを取り付けようと思ったきっかけは、前回書いた通り、渋滞に巻き込まれるとクラッチが重くて左手がつりそうになるからです。
けれど、そこまでひどい渋滞に合うことはそう滅多にありませんし、いまのままでも(クラッチレバーの交換によって)我慢できないほどクラッチが重いわけでもないので、大枚はたいてまでクラッチの軽量化を図ろうとは思っていませんでした。
じゃあなぜVPクラッチの取り付けに踏み切ったかというと、VPクラッチが単なるクラッチを軽くするだけのパーツではなく、クラッチ強化パーツでもある、ということを理解したからです。
先に書いた通り、VPクラッチの発送はもともとドラッグレーサーの遠心クラッチ機構から着ています。ドラッグレーサーの強烈なエンジントルクに耐えるクラッチにするためのパーツ、つまり強化クラッチなのです。
一方で、我がスポーツスターにとってクラッチはウイークポイントのひとつ。大排気量ツインエンジンという大トルクエンジンで、そもそもクラッチに厳しい上に、クラッチオイルがエンジンオイルと分かれているが故に、たった1クォート(約946.35 ミリリットル)のオイルでギアとクラッチを潤滑しなければいけません。
さらに、スポスタ乗りには有名な話ですが、スポーツスター(空冷モデル)のクラッチには「スプリングプレート」という特殊なクラッチ板が一枚含まれていて、クラッチがつながる際の衝撃を逃がす役割があるのですが、この「スプリングプレート」が曲者で、プレート同士を留めているリベットが割れ、クラッチ内部に飛び散り、周りのパーツをダメにする、という持病があります。
何軒かのハーレー専門店で話を聞くと、そこまで頻発するものではないらしいのですが、予防というとなかなか難しく、「起きる時は起きる」のだそうです。
この現象の原因は、クラッチのすべりや半クラの多様によるリベットの摩耗によるものなので、強化クラッチであるVPクラッチを入れることは、スポーツスターのクラッチを守る意味でもオススメ・・・・との記事をいくつかのホームページで見ました。
クラッチが軽くなることは副次的効果。本質はスポーツスターのウイークポイントであるクラッチを守ることにある・・・という格好の言い訳(←誰に対する?w)が、VPクラッチ導入の決め手となったのでした。
パインバレーさんでVPクラッチを購入
VPクラッチ取り付けようと思ったのには、もう一つ理由があります。
スポーツスターにVPクラッチを取り付けようとすると、プライマリーカバーを開ける必要があり、必然的にクラッチ板を目視チェックすることになります。
今年、プロに点検してもらった我がスポースターですが、さすがにプライマリーカバーまでは開けてもらってはいません。↓↓↓
前述のとおり、クラッチが鬼門のスポーツスター。一度プロによるチェックを受けておきたいと思っていたのですが、それなりに工賃がかかります。そこでVPクラッチを取り付けてもらえば一石二鳥。カスタムついでにチェックもしてもらえる、というわけです。
そして、取り付けはやはり前回メンテナンスしてもらった星野輪業さんにお願いするつもりでした。
早速メールで相談したところ、もちろん取り付けはOKだったのですが、VPクラッチ自体は持ち込んでも良いとのこと。
ならば少しでも安く手に入れようと、ネット中を探しました。
ここで衝撃の事実が発覚。
ここ最近の資源高騰の波はバイク業界にも押し寄せており、VPクラッチも価格改定がされていました。
TAK’S PERFORMANCE PARTSさんのHPより
価格改定のお知らせ
ガーン!
もう少し早く決断していれば・・・。
(まあ、そんなビックリするほどの値上げじゃないんですが。)
残念。でも諦めきれず、しつこくネットを調べてみたところ、なんと某通販業者さんに在庫があるとのこと。もちろん価格は旧価格。
これはもう買うしかない!ということでポチっと。
無事値上がり前の価格で手に入れることが出来たのでした。
VPクラッチが届きました。
数日後、無事VPクラッチが届きました。
実は今のVPクラッチは、エンジンの仕様によってスプリングの強さを選べるようになっているのです。
https://www.taksperformanceparts.com/product/new-tpp017-vp-sport-evo/
スポーツスター用の場合、下は883ccエンジン用の「SP130」から、100馬力以上のカスタムエンジン向け「SP280」まで、5段階のダイヤフラムスプリングが選べます。しかも後々の改造に対して適合できるよう、ダイヤフラムスプリングのみ単体でも購入できます。
僕の場合、吸排気を換え、FP3でチューニングしているとはいえ、車検対応のマフラーですから、トルクはノーマルと大差ないと思われるので、1200ccのノーマルエンジン用「SP190」を選びました。
このスプリングの場合、ノーマルのロードスター(XL1200CX)に対しては、-30%(2003年までのモデルに対しては-40%)クラッチが軽くなる設定です。
-30%というと費用の割に効果が薄いような気がしますが、僕のスポーツスターはもともとサンダンスオリジナルクラッチレバーのおかげでノーマルよりかなり軽くなっていますから、そこからさらに-30%軽くなれば十分な気がします。
それに主目的は「クラッチの強化」ですから。
というわけで、届いたVPクラッチを持って星野輪業さんを訪ねました。
この話、その3へ続きます。