あれ?冷却水がない!?
先日、所用があって千葉まで出かける予定だったのですが、その日、息子が車を貸せという。
うーん、しょうがないなあ。
とはいえ、行先は電車・バスで行くには少々不便なところ。
そこでバイクで行くことに。
普段、ツーリング以外の用事でバイクを引っ張り出すことは滅多にないのですが、幸い天気も良さそうだし、たまにはいいでしょう。
***
出発準備をしている時に、ふと気になったのが冷却水のリザーバータンク。
我が愛車、KTM 890Duke のリザーバータンクはすごく目立つところにあるのですが、ちょっと見たところ冷却水が見えません。
ん?これっていいんだっけ?
正直なところ、これまで冷却水なんてまったく気にしていませんでした。ディーラーで初回点検を受けてからまだ日も経ってないし、水温計の動きが異常を示したこともないし。
きっとサイドスタンドで傾いてるから見えないんだろう、と思ってました。
そこで車体を垂直に立ててみたところ、それでも冷却水は見えません。
ん?なんでだろう?
***
エンジンオイルはエンジンを数分回した後に止め、1,2分待ってから測ります。
冷却水はいつ測るんだろう?
KTMの取説を見ると「エンジンが冷えている時に測る」とあります。
ということは・・・今でしょ。(古いな。)
つまり、正しい見方をしているのにクーラントが見えません。
これはマズイのかも・・・
ここで初めて僕は「異常」を認識したのでした。(遅いって。)
補充はクーラント?水道水?蒸留水??
さて、どうしましょう。
あらためてKTM Duke890 の取説を読んでみると・・・
と書かれています。
ぱっと見、リザーブタンクには水がありません。
もしやこれは、ネットでよく見るKTMの冷却水漏れ、というやつか?
・・・万事休す。
ただ、車体周りにクーラントが漏れたような跡は無く、また点検窓からエンジンオイルを覗いてみると、まだ透明度のある茶色で、特に量が多いということもありません。
ほんとに冷却水は空っぽなのでしょうか?
どうにも見づらいので、リザーバータンクを外してみます。
T-25のトルクスねじを3本外せばサイドカバーごとリザーバータンクが外れます。
キャップを外して中を覗き込むと、底の方にわずかに液体が見えます。でも少なすぎて色がよくわかりません。見た感じミドリでもピンクでもなく、「限りなく透明に近い茶色」のようにも見えます。
(そんな小説があったなあ・・・)
~閑話休題~
でも、とにかく、わずかながらも冷却水が残っていました。
あった!あった!冷却水。残ってた!
これなら液を補充すればバイクに乗れます。(ホントか!?)
でも何を継ぎ足せばいいのでしょう??
***
もちろんクーラントを足せばいいんでしょうけれど、この時間、まだ空いている店はありません。
けれど、早く出発しないと今日の用事に間に合わなくなります。
そういえば、クーラントが減ったときは、水を足せばいいという話を聞いたことがあります。水道水でもいいんだっけ? いや、蒸留水だったっけ・・・。
急いでネットで調べると、まあ実にいろんなことが書かれています。
「素直にクーラントを足せ」
「いや水だ」
「水道水でも大丈夫」
「だめだめ、工業用蒸留水じゃないと壊すぞ!」 etc.・・・
クーラントを足すにしても、緑やピンクのクーラントがあって、これらを混ぜてはいけない、と書いてあったりします。でも入ってるのは茶色っぽいぞ???
うーん。どうしよう・・・
そうだ、ディーラーに電話してみよう。いや、まだ開店前だなあ・・・
ダメもとで電話をしてみると、開店前にもかかわらず、店長が電話に出てくれました。
私:「かくかくしかじかで・・・・」(”かくかくしかじか”っていったい何なんでしょうね。)
店長:「あー、はい! では、クーラントを足しましょう!」(明るい声。)
私:「足せばいいんですか?そうですか。でも何色を買えばいいんでしょうか。適当なクーラントを買って来て入れれば良いの??」
店長:「うーん、出来ればある程度ちゃんとしたやつを入れた方がいいんですけどねぇ。」
ちゃんとしたヤツって言われてもなあ・・・
店長:「お手数ですが、乗ってきてくれれば足しますヨ。」
私:「え?乗っていってもいいですか? 走って大丈夫ですか?」
店長:「はい。リザーバータンクに無いだけで、ラジエーター本体にはクーラントが入ってるはずですから。」
なるほど。エンジンが冷えた状態で、わずかながらも冷却水が(リザーバータンクに)あるということは、ラジエーター内には十分な冷却水あるということなんですね。
私:「あの~。今日、用事があって、どうしてもバイクに乗って行かないといけないんです。なので、今から伺ってもいいでしょうか。」
店長:「あ、はい。いいですよ!」
おー助かった! まさに救いの神です。
というわけで、急いでリザーバータンクを元に戻し、エンジンを始動してディーラーへ向かいました。
なぜかエンジンはいつもにも増して快調です。
正解はピンク?
30分ほどでディーラーへ到着。
出迎えてくれた店長が
「お急ぎでしょうから、サクッと補充しましょう!」と言って持って来てくれたのは小さなオイル刺し。
中には鮮やかな赤い(ピンク?)の液体が入っています。
オイルジョッキみたいなので入れるのかと思っていたので、その小ささにびっくり。
そもそもクーラントって何リットルぐらい入っているものなのかも知りません。
店長はリザーバータンクの蓋を開けると、オイル刺しで赤い(ピンク?)液体を注ぎます。
しばらくすると「はい、入りました~」と店長。
え?こんなもんでいいの???
おそらく入れたのは100mlぐらいだと思われます。(多分。)
入れた状態で見ても、点検窓から赤い色は見えません。
私:「あの~。冷却水見えませんよね。」
店長:「ええ。見えづらいんですよねぇ。ここから見ると、ほら。」
店長が指さしたのは車体の下側から覗いたところ。たしかに赤い色が見えます。
(これ、赤なんだろうか、ピンクなんだろうか。赤と言えば赤だし、ピンクと言えばピンクだし。)
こんなもんでいいんですね。
私:「こんなにすぐ(冷却水が)無くなるもんですか?」
店長:「まあリザーブタンクが小っちゃいですからね。」
私:「じゃあクーラント1本買っといて、ちょくちょく足した方がいいですよね?」
店長:「いや、オイル交換の時なんかに(冷却水が減ってるのに)気づいたら足しておきますよ。」
え、ほんと?そんなもんでいいの?
でも助かりました。ありがとうございます。
「おいくらですか?」と聞いたら「いや、今回は大丈夫ですよ。」とクーラント代も工賃も取られませんでした。多謝!
ちょっと腑に落ちないところもありつつ、でもこれで安心して千葉まで走れます。
ありがとうございます!とお礼もそこそこに、急いでバイクを発進させたのでした。
クーラント液について学ぼう
今回改めて思ったのは、わたくし、冷却水についてホントに何も知らないなあ、ということ。
考えてみると、僕が最後に乗った水冷のバイクは HONDAの BROS (PRODUCT ONE)。1988年発売のバイクです。
それ以降は昨年まで乗っていたスポーツスターを含め、すべて空冷、もしくは油冷エンジンのバイクばかりです。
ブロスも乗っていたのはわずか2年足らず(最後は盗まれてしまいました。涙)。車検もまだだったので、冷却水なんて気にしたこともありませんでした。
なので、クーラントの事は殆ど知らずにバイクライフを過ごしてきたのでした。
これを機にちょっと勉強しようと思います。
クーラントってなんでも同じ?緑と赤?「スーパーLLC」って何がスーパーなの???
1.クーラントって何?
そもそもクーラントとは何か? 水冷エンジンにおいてエンジンを冷やすための冷却水ですよね。あったまった冷却水はラジエターで冷やされ、ふたたびエンジンへ回っていきます。
冷却水だけど、普通の水じゃだめなのか。これは、普通の水だと0℃以下で凍ってしまうからダメなのです。水は凍ると体積が増えますから、エンジン内で凍ると最悪、エンジンを壊してしまいます。
クーラント(LLC=ロングライフクーラント)にはエチレングリコールやプロピレングリコールが入っていて、厳冬期でも凍らない(凍りずらい)ようになっています。クーラントの事を「不凍液」とも言いますよね。
その他、防錆性(普通の水だとエンジン内が錆びる)や消泡性(泡立ちを抑える)、潤滑性(ウオーターポンプなどを守る)が必要なので、普通の水ではダメなんですね。
2.赤と緑は何が違う?まぜたら危険??
クーラントには主に「赤色」のものと「緑色」のものがあります。
ネットで調べると「この2つは混ぜてはいけない」と書かれています。ということは何かが違うのか?
ところが、調べてみるとこの2つは基本的に同じモノなんだそうです。色がちがうだけ。車両メーカーによって純正のクーラントの色がちがうので、両方揃えているんだそうです。
じゃあなぜ混ぜてはいけないのか? それは色が汚くなるから。(笑)
そもそもクーラントが赤や緑なのは、目立つようにわざわざ色が付けられているんだそう。漏れたときに漏洩箇所が見つけやすいのと、劣化したときにわかりやすいからなんだそうです。
したがって色が汚くなるのはNG、ということなんです。
3.スーパーロングライフクーラントは何がスーパー?
現在のクーラントはLLC(ロングライフクーラント)と言われますが、これは昔のクーラント(不凍液と言ってましたね)に比べてロングライフなのでそういう名前がついてます。
これに対して最近「スーパーロングライフクーラント」と呼ばれるクーラントがあるそうです。何がスーパーかというつ耐久性。普通のLLCが2~3年で交換なのに対し、スーパーLLCは7~8年位もつらしいです。
また、普通のLLCがエチレングリコールを主成分とするのに対し、スーパーLLCはプロビレングリコールが主成分。エチレングリコールはかなり毒性が高いのですが、プロビレングリコールは食品や化粧品、医薬品にも使われる成分で、毒性がかなり低いそう。つまり環境にも優しいということです。
ただし「スーパー」なだけに、価格もちょっとスーパーです。
ちなみに、このスーパーLLCですが、色は「青」または「ピンク」なんだそうです。
普通のLCCとスーパーLCCは混用不可なのですが、青はともかく、「赤」と「ピンク」って間違えそうですよね。
4.希釈タイプ?そのまま使えるタイプ?何で薄める?
使用方法
1.エンジンを停止し、冷却液系統を点検してから、冷却液を抜き取り、水洗いしてください。
~中略~
5.先に、ラジエータに本品を入れてから、水道水(軟水)を満たしてください。
6.注入後エンジンを始動し、水温が安定するまでアイドリングを行い、その後エンジンを停止し液量を確認してください。
7.液量が不足している場合は、水道水(軟水)を補充してください。
8.リザーブタンクにも同じ濃度の液を規定レベルまで注入してください。
9.使用中に、リザーブタンクの液量を点検し、不足している場合は、同じ濃度の液を注入してください。
5.足りない時、水を入れるのはNG!?
最近はあまり見かけませんが、昔は真夏に車のボンネットを開けて、ペットボトルの水を注いでいるドライバーをよく見かけました。冷却水が減っているのに気づかず、エンジンがオーバーヒートしたんでしょうね。
KTM 890 Dukeの指定クーラントは?
さて、ここまでは一般的なクーラントに関するお勉強でした。
では、わが愛車のクーラントは何を入れればいいのでしょうか。
我が KTM 890 Duke の推奨クーラントは MOTOREX COOLANT M3.0 です。
このクーラントの特徴は「シリケートフリー」ということです。
・・・シリケートって何?
MOTOREXの発売元であるデイトナさんのホームページによると・・・
この堆積物は水路の詰まりやシールを傷める原因となる場合があるため、シリケートフリーのクーラントを推奨する車種が増えています。KTMでは、2015年のストリートモデル、2016年のオフロードモデルからシリケートフリーのクーラントに変更されています。OAT(有機酸テクノロジー)により硝酸塩、リン酸、アミンを含まずにアルミの腐食を防ぎ、キャビテーションも抑制するLLCです。シリケート層を形成しないことで、熱負荷の軽減に役立っています。