気付いたらリアパッドが限界近くまで減っていました
以前、我が愛車 KTM 890DUKEのブレーキパッドを交換した話を書きました。
すり減ったノーマルのブレーキパッドから、ZCOOのメタルブレーキパッドへ交換した結果、非常に強力で、かつコントールしやすいブレーキになりました。
(DUKE Rのブレンボには及ばないんでしょうけれど。)
ただ、この時交換したのはフロントブレーキパッドのみ。リアは手つかずです。
我がKTM 890DUKEのリアブレーキはピンスライド式。対向ピストンのキャリパーに比べると構造が複雑でわかりづらく、キャリパー自体も簡単には外せそうにないので、どうにも手を出す気になれません。
まあ、こっちはちゃんとプロに交換をお願いしよう、そう思っていました。
ところがそんなことはすっかり忘れ、この夏も週末ごとに乗り回していました。
そんなある日、ふとリアのブレーキパッドを見てみると、なんだかずいぶん減ってしまっています。
ありゃ。どうしよう。
実は翌週からちょっと長めの休みがとれたので、久々のロングツーリングに行こうかな、と思っていたところでした。今から店にメンテを依頼しても、多分ツーリングには間に合いません。とはいえ、この状態でロングツーリングに行くのはリスクがあります。
しかたない、自分で交換するか。と重い腰を持ち上げました。
自分で交換を決意し、パッドを探す
さっそくパッドを探します。
フロントと違い、リアのブレーキパッドはそこまでこだわりはありません。
ここはコスパ重視で、と思うのですが、そもそもKTMの純正リアキャリパーに適合するブレーキパッドの情報なんてほとんどありません。
こういう時は、安心の日本製、かつ、幅広い適合車種を誇るベスラしかない!
ということで、ベスラのホームページへ。
調べてみると、890DUKEのリアのブレーキパッドは VD-953JL(メタルパッド)とレジンパッド(SD-953)の2種類があるようです。
(レジンパッド)雨にも強いメタルパッドの方がいいかなとも思ったのですが、今回はコスパ重視でレジンパッドのSD-953を選ぶことにしました。
リアブレーキパッドの交換に挑戦
パッドも届いたので、リアブレーキパッド交換に挑戦します。

890DUKEのリアブレーキキャリパー。どう見てもキャリパー本体を取り外せそうにありません。多分キャリパーを外そうと思ったら、リアホイールを外さないと出来ないんだろうと思います。

キャリパーを後ろから覗いたところ。かなり摩材が薄くなっているように見えます。

パッドの厚みを調べるために、10円玉を当ててみます。ちなみに1円、5円、10円玉の厚みは約1.5mm。50円、100円は1.7mmだそうです。10円玉よりはパッドの厚みがある状態なので、すくなくとも1.5mmは摩材が残っているようです。

キャリパー本体を外すのは諦め、パッドのみ抜き取ります。パッドはここ(赤丸)のパッドピンで止まっています。このピンを抜けば、ブレーキパッドを抜き取れるハズ。

パッドピンの先にクリップが付いているのでそれを外します。

取れました。

パッドピンを抜きます。トルクスのT25ですが、ソケットが無かった。買わなくちゃなあ。

パッドピン抜けました。

ピンを抜いたらラジオペンチでパッドを引き抜きます。

無事パッドが外れました。ここまでは順調。

ノーマルのリアブレーキパッド。

裏面にはプレート?シム?が付いていて、なぜか窓が開いています。何か意味があるんでしょうか。

パッドの厚みはこんな感じ。思ったより残ってましたね。

ノギスでざっくり計測。厚さ6.0mm-バックプレート3.0mm=パッドの残りは約3mm。

今回買ったベスラのSD-953。安心の日本製。

QRコード読んでみたら、適合表でした。国産はモチロン、外車も幅広くカバー。さすがベスラ。

厚みはこんな感じ。さすがに新品はぶ厚いですね。ちなみにぼくはパッドの角は削りません。異物を噛み込みやすくなるのが嫌だから。キーキー鳴いたらその時に考えます。

パッドの厚みは 9.3-3.3=6.0mm。 バックプレートもノーマルより厚みがあります。
ピストンのグリスアップに四苦八苦
無事ブレーキパッドが外れました。ここまでは順調です。
新しいブレーキパッドを組む前に、きゃりぱーのピストンを掃除します。汚れの付いたままピストンを押し込むと、シールを傷めるからです。

使うのはワコーズのブレーキクリーナーです。
前にも書きましたが、僕はブレーキ周りには必ずワコーズのブレーキクリーナーを使います。
もっと安いブレーキクリーナーもありますし、パーツクリーナーでも「ブレーキにも使えます」と書かれているものもあります。けどワコーズのブレーキクリーナーしか使いません。
(ブレーキ以外には安いパーツクリーナーも使いますけど。)
それは、ある雑誌記事でワコーズの開発者が「ワコーズのブレーキクリーナーは、ブレーキのシールを傷めないように、ちゃんとコストをかけて作ってます」と言ってたから。
ホントに安いブレーキクリーナーだとダメなのか? それは判りません。素人だし、実験したことないし。でもまあ、ワコーズの開発者が言うんだから、少なくともワコーズのブレーキクリーナーは安心なんでしょう。(ワコーズに騙されてるだけかもしれませんけれど。w)
キャリパーピストンにブレーキクリーナーを吹きかけて、ウエスで磨きます。すると汚かったピストンがピカピカになります。よかったよかった・・・と言いたいところですが、ピストンの見えているところはピカピカですが、見えない側の半分がどうかはわかりません。
ブレーキディスクがじゃまで、ピストン回しも使えません。
仕方がないので、適当なウエスをハサミで切って、ひも状にしたものにブレーキクリーナーを染み込ませてピストンの側面を磨きます。これが思った以上に難しい。

ひも状の布にブレーキクリーナーを染み込ませてピストンを磨きます。これがなかなかうまくいきません。必死に格闘してなんとかきれいにしました。(多分。見えないからね。)
なんとかピストンがきれいになったら、今度はピストンにシリコングリスを塗ります。同じようにひも状の布にシリコングリスを塗り付け、ピストンに巻き付けようとするのですが、これが更に難しい。ひもがなかなかピストンに巻き付かないからです。
もっといい方法ないかなあ、と思いつつ30分ぐらい格闘しました。
今思うと、布や紐より、タイラップみたな固いものを使った方が良かったかもしれませんね。

なんとかピストンをキレイにし、シリコングリスを塗りました。
キャリパーピストンをどうやって押し込むか
ピストンをグリスアップ出来たので、いよいよ新しいブレーキパッドを装着します。そのためにはまず、飛び出しているキャリパーピストンをひっこめる必要があります。
実はこれが一番の疑問でした。キャリパー本体を外さずに、どうやってピストンをひっこめるのか。
普通はブレーキキャリパーのピストンは、手で(指で)押し込んで戻します。ただ、どうにも硬くて動かないことも多々あります。(経験アリ)
キャリポー本体を車体から外せれば、ピストン戻しなどの道具も使えるのですが、外せないとブレーキディスクが邪魔になるので使えません。
海外のサイトをみると、
「マイナスドライバーを突っ込んで、こじってピストンを押し込め」
と説明している動画もありました。そんなことしたらディスクが歪むと思うけどなあ。
あとは、ウオーターポンププライヤーで挟み込んでピストンを押し込む、と書いてあるサイトもありました。ただこれも、ピストンとブレーキディスクの間に隙間が無いと、ウオーターポンププライやのアゴを差し込むことが出来ない気がします。
うーん。どうしたものか?
まあ、ここまで来たらやってみるしかありません。
***
まずは、素手で(指で)力いっぱい推し込みますが、ピストンはびくともしません。
そうそう。ブレーキオイルタンクの蓋を開けておくのを忘れてました。
フルードタンクのキャップを開け、あふれ出て周りにフルードが垂れないように、ウエスをタンクに巻いて養生します。
本当はこのとき、注射器などを使って少しブレーキフルードを抜いておきます。ピストンを押し込むと、フルードがタンクに逆流してきて溢れるからです。
・・・とわかっていたんだけれど、注射器を用意するの忘れたんだよなあ~

フルードタンクの蓋を緩めます。(この後、水にぬらした布を巻き付けて養生しました)
ともあれ、まずはフルードタンクの蓋を開けました。これで無事ピストンを押し込むことが出来るはず。
ふんがーーー!! びくともしません。
そもそもディスクとピストンの隙間が小さくて指入んないし。だから力が入らないんだよなあ。
仕方がないので、最終手段です。ウオーターポンププライヤーで挟み込んでピストンを押し込みます。

そのまえに、ケーブル(たぶん、ABS用の回転検知センサーのケーブル)が間違って引っかけそうなので外します。(T-30のトルクスねじ)

でもやっぱりディスクとの間に隙間が無いから、ウオーターポンププライヤーのアゴが入んないじゃん!って一瞬思ったのですが、このリアキャリパーは片押しのピンスライドキャリパーなので、キャリパー本体が左右にスライドします。そこで、めいっぱい手前(矢印の方向)にキャリパーを動かして隙間をつくります。

ピストンやキャリパー本体を傷つけないよう、布で養生しつつ、ウオーターポンププライヤーでピストンをキャリパーボディーごと挟み込んでピストンをひっこめます。ただし、気を付けないとピストンが傾いて齧ってしまいますから、すこしづつゆっくりと挟んで押し込みます。
ウオーターポンププライヤーでキャリパーボディごと挟み込んでピストンを押すと、すんなりとピストンが引っ込んでくれました。あーよかった。

ピストンにグリスアップする際、ブレーキディスクにグリスがついた可能性があるので、新しいパッドを装着する前にペーパータオルとクリーナーでブレーキディスクをクリーニングします。
新品のブレーキパッドの裏面とスライドピンの通る穴に薄くシリコングリスを塗り、元のパッドの位置に押し込みます。

新しいパッドを押し込んだら、パッドピンを差し込みます。

パッドの先端がちゃんと収まるべきくぼみに収まっているかを目視確認します。

ちゃんとハマってますね。

T-25のトルクスねじで締め込んだら、忘れないようにピンの先端にクリップをはめます。
パッドが無事収まったら、ブレーキシリンダーの蓋を締めます。
が、やっぱりちょっとブレーキフルードが溢れてました。(フロントブレーキパッドの時の教訓をなんら生かせず。)
ちゃんと養生はしていましたが、万一を考え、水をかけて各部を徹底的に洗浄します。(ブレーキフルードは塗装を侵すので。)

ハンドポンプで水を吹きかけ、飛び散っているかもしれないブレーキフルードを洗い流します。ちなみにブレーキフルードは水に溶けます。
ハンドポンプ。水道の使えない屋外ガレージに停めている人間には強い味方です。

最後にブレーキペダルを何度か踏み込んで、ピストンを押し出します。タイヤを手で回してみて、ブレーキを操作し、ちゃんと回転が止まるのを確認して完成。
こうして無事リアブレーキパッドの交換を済ませることが出来ました。ピストンのクリーニングとグリスアップさえちゃんとできれば、比較的簡単な作業と言えます。
ちょっと苦労しましたが、これでまたひとつ、メンテナンス作業を覚えることが出来ました。
慣らし運転
無事パッドを組めたので、慣らし運転します。パッドの面がブレーキディスクの表面にに馴染むまではブレーキが効かないので、低い速度でじんわりブレーキを掛けてパッドの慣らしを行います。(いきなりハードブレーキングをしないこと)
馴染むまではブレーキが効かない・・・と書きましたが、いや、ホントに効きません。
走り始めたときは、余りに効かないので「まだブレーキディスクにグリスがついたまま残ってたのかな」と思う程でした。
でも、市街地を信号でブレーキングしながら30分ほど走ると、徐々に効き始め、1時間もすると十分な効力を発揮するようになりました。
ノーマルに比べるとかなり柔らかいタッチですが、今のところはブレーキが鳴くこともなく、特に問題はなさそうです。
(今後さらに慣らしが進むと、また印象が変わるかもしれませんが。)
これで前後ブレーキパッドが新品になりました。当面は安心して乗れそうです。