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コラム:僕がハーレーオーナーになるまで(その2)

2016年4月に登場したハーレーロードスター(XL1200CX)に一目ぼれ。まさに求めるスポーツスターではありましたが、その価格に購入は断念・・・していたのですが。

愛車の不調をきっかけに、本気で購入検討を始める。

そのころ乗っていたバイクはSUZUKIのBandit1200でした。油冷エンジンをコンパクトな車体に積んだシンプルなモデルで、あまり人気車ではありませんでした(特にノンカウル)が、とてもいいモデルでした。

Bandit1200(写真はカウル付の1200S)

バイクを買う時はいつも「よし、10年10万Kmは乗り続けるぞ!」と思って購入するのですが、実際はなかなか難しいもの。ところがこのBandit1200。走行距離こそ7万Kmほどでしたが、ちょうど2000年に買ったこのバイク。気が付けばなんと16年余りも乗っていました。

よし、ここまで来たら、20年乗ってやる。と思っていたのですが、、、

2016年の夏のこと。帰省を兼ねて和歌山へロングツーリング。4泊5日の旅で1800km程の距離を無事走り終えたのですが、猛暑の中、酷使したせいか、旅の途中からだんだんエンジンノイズが大きくなっていきました。

和歌山県 白浜「千畳敷」にて

そのツーリング後、チョイノリをしていても非常にエンジン音が耳につきます。最初は気にしないようにしていたのですが(そういう問題じゃないよなあ。(笑))、だんだん心穏やかではなくなった来ました。

オイル交換やタペット調整などは定期的に行ってもらっていましたが、なにしろ16年。そろそろガタがきてもなんらおかしくはありません。

さてどうするか。

とりあえず修理してもらい、延命するという手もありますが、この先ずっと乗り続けるつもりならば、そろそろ思い切って手を入れないと、この先部品供給もあやしくなってくると思われます。

けれどエンジンをOHしてもらい、車体もメンテするとなると、かなりの金額が飛んでいくでしょう。

それとも思い切ってここで乗り換えるか。ずいぶん悩みました。

ただ、この時点では、乗り換え候補として考えていたのは、やはり国産の四気筒で、ハーレーは頭にありませんでした。とても手を出せる値段じゃない、と思っていたからです。

スポーツスターへの思い再び。

買い替えかオーバーホールか。延々と悩んでいたのですが、いずれにせよ先立つものはありません。(笑) 長期ローンを組んで支払う事になるのですが、そこでふと思いました。

「おれ、あと何年ローンが組めるんだろう。」

まだまだ働き盛り、とは思っていても、僕ももう50の大台目前。いくらハーレーが長期ローンを組めるといっても、住宅ローンじゃあるまいし、定年後まで続くローンを組むことはできないでしょう。だとすれば、僕がハーレーオーナーになるんだとすれば、そのチャンスはもう今回が最後なんじゃないか。

もう一つ考えたこと。それは、

「ハーレーって、一体いつまで買えるんだろう?」

という事。

ハーレーも電気バイクを作ろうか(※)というこの時代。また違った形でハーレダビッドソンは残っていくんだと思いますが、今のような空冷大排気量のVツインエンジンを積んだハーレーは、あと数年で姿を消すんじゃないか、という噂もあります。

※2018年2月、ハーレダビッドソンは「今後18か月以内に、ハーレー・ダビッドソンは初の電動バイクの市販を目指す」と発表しました。

※2018年7月31日、ハーレダビッドソンは2019年9月に電動バイクを発売すると発表しました。

実際、年々厳しくなる排ガス規制や騒音規制に、今の空冷Vツインエンジンでなんとかごまかしごまかし対応していく、というのは、もはや限界にきているという事は想像に難くありません。

そう、僕のあこがれたスポーツスターを手に入れるのは、今しかない。そういう結論に至りました。

まあ、払えなくなったら、売っぱらって、違うの買えばいいんだし。(笑)

ディーラーへ試乗に

そう結論を出した僕は、早速ディーラーへ出かけていき、ローン契約書に判子を・・・とはならず。

この期に及んでまだ一抹の不安が。それは、

「おれ、本当にハーレーを愛せるんだろうか?」

という事でした。

初のハーレー。初めての外車です。スポーツスターにちょこっと乗せてもらったことはあっても、違う車種ですし、それで全てが分かるようなものありません。

長期ローンを組むんだし、ここは納得してから買いたい。

そこで、ディーラーでロードスターを試乗してみる事にしました。

これまでのバイク人生で、何台ものバイクに乗ってきましたが、購入前に試乗して決めたバイクは一台もありません。いつも雑誌で見て一目ぼれして購入、のパターン。

前車のBandit1200なんて、発売前に購入したので、実車を一度も見たことのないまま納車されました。

中にはXJR1200のように、購入した後で「こんなデカいバイク、本当に乗れるの?」と思ったこともありましたが、意外と買ってから後悔した、という事は一度もありませんでした。

けれども今回は今までとは違うかもしれません。。まあ先ずは話を聞いてみて、出来れば試乗もしてみよう、という事で、いそいそとディーラーへ出かけました。

XL1200CX ロードスターに試乗

ロードスターの試乗車がある店をネットで調べ、近くのハーレーディーラへ。

試乗をお願いすると、簡単な誓約書にサインをさせられた後、さっそく試乗させてもらえる事になりました。

バイクでディーラーまで行ったので、ヘルメット、グローブ、ジャケットは自前ですが、ヒットエアーのベスト型エアバックジャケットが用意されていて、それを装着するよう指示されました。安全への配慮が伺えます。その時点で「ああ、このディーラーいいなあ。買うならココにしよう。」と思いました。

店の前には2台のスポーツスターが。1台はフォーティーエイト。そしてもう一台はロードスターです。

後ろから見るととってもスリムで、全体の低く、レーサーレプリカとは全く違った形ですが、これはこれでとてもスポーティーに見えます。

いや、写真で見る以上にかっこいい。

試乗は店員さんがフォーティーエイトで先導してくれ、店の周辺を走ります。時間にして20分位でしょうか。

跨がると両足が着地します。短足の僕では踵までべったり、とはいきませんが、まったく不安はありません。試乗で倒したらどうしよう、と心配していましたが、これなら大丈夫そうです。

クラッチを握り、エンジンを掛けます。クラッチは重いですが、短時間の試乗で疲れきる、といいほどではありません。それよりギアが固く、なかなかニュートラルが出ません。これは試乗中ずっと苦労しました。(試乗後に店員さんに聞いたところ「まだ新車であたりがでてないから」とのことでした。見るとオドメーターの数字はまだ80km。本当に新車です。)

店員さんに続いてスタートします。排気音は決して大きくはなく、振動もさほどではありません。エンジンもハーレー独特の鼓動、といった感じではなく、割と軽やかなトルク感を伴いつつ、スルスルっと車速を伸ばします。

最初は違和感を感じたポジションも、慣れてくればどうという事もありません。それより交差点で曲がる際、意外なほど自然に曲がる事に驚きました。ハンドルが切れこんだり、寝かせづらかったりといった事が全くありません。

じゃあすごい面白いか、というと正直そうでもありません。試乗コースの途中にあった、緩やかに左右に曲がるS字の道を通った際は、

「おっ?こういう道は気持ちいいなあ~」

と感じたものの、それ以外は特に感動もなく、試乗を終えました。

ギアシフトは最後まで硬いままでした。

試乗をする前には、

「きっと、乗ればビビッときて、『ああ、これしかない!』って思うんだろうなあ」

とか、

「『もう欲しくてしょうがない!!!』なんてなるんだろうなあ」

なんて思っていたのですが、実際は

「まあ、悪くはないけど・・・」

と思うだけで、特に物欲が盛り上がるでもなく、あっさり、という感じで終わってしまいました。

自分の愛車に乗った瞬間・・・

店員さんに試乗のお礼を言い、特に購入を勧められるでもなく、すんなり帰路につきました。

「買い替え、どうしようかなあ・・・。」

とすっきりせぬ気持ちのまま、自分の愛車にまたがり、エンジンを掛けてスタートした瞬間、衝撃が走りました。

慣れ親しんだポジション。軽く回るエンジン。ブレーキはよく効き、シフトチェンジは軽い力でスコスコ入ります。

うん、これこれ! そう思いながら走り続けていると、ある感情が湧き出てきて、自分でも驚きました。それは

「あれ?なんかつまんない。」

そう、とっても自分のバイクがつまらないものに思えたのでした。

エンジンは下の力がなく、ガチャガチャとうるさく、車体は重心が高くて、どちらかへ倒れこんでしまいそうです。

ディーラーから家までのほんの15分ほどのライディング。

渋滞の市街地を走るコースは、そもそも面白く感じたことなどない道でしたが、それでもほんの一時間ほど前まで普通に乗っていた我が愛車が、なんともつまらないものに思えてしまったのでした。

16年も乗り続けた愛車が、たった20分ほどのハーレー体験で、まったく違ったものに感じられるようになってしまったのです。

「あー、ダメだ。もうおれ、このバイクに乗り続けられない。」

この時が、ぼくがハーレーへの乗り換えを決意した瞬間なのでした。

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