水抜き剤って知ってますか?
それは、会社の後輩と話をしていた時のこと。
「それでさ、水抜き剤をさあ・・」
「あの~、水抜き剤って何ですか?」
「えっ? 水抜き剤知らないの?」
昔はガソリンスタンドへ行くと、うっとおしいくらいしつこく勧められた水抜き剤ですけれど、僕より年下の彼は、ガソリンスタンドというとセルフ式のガソリンスタンドにしかいった事がないらしく、したがってガソリンスタンドで水抜き剤を勧められたこともないそうです。
規制緩和により日本でセルフ式ガソリンスタンドが認められたのが1998年の事だから、それ以降に運転し始めた人には、フルサービスのガソリンスタンドへは行ったことがない、という人もいるのかもしれません。
そこで、水抜き剤を知らない人に向けて、
「ちゃんとバイクを快調にしておくためには、時々水抜き剤を使ってやりましょう!」
と、書こうと思っていたのですが・・・。
水抜き剤って必要?
ガソリンタンクに水が溜まってしまい、タンクにサビが発生するのを防ぐため、ガソリンに混ぜて使うのが「水抜き剤」。ところが、あらためて調べてみると、樹脂製のガソリンタンクが主流になっている最近のクルマでは「水抜き剤は不要」というのが定説になりつつあるようです。
では鉄製のガソリンタンクがいまも主流なバイクにおいては、水抜き剤の使用は必須と言えるのか。いろいろ調べると、どうも積極的にお勧めできるようなものではないような・・・・
果たして、バイクには水抜き剤が必要、それとも不要、どちらなんでしょうか?
水を抜くのが「水抜き剤」?
バイクのガソリンタンクの中を覗いたことがある人は御存じかと思いますが、鉄製のバイクのガソリンタンクの中(底)って、結構小さな赤錆が浮いていたりします。これは、冬場など、昼間ガソリンタンク内に入った空気が、よる冷やされて結露が発生。この水分が原因でタンク内が錆びたもの。タンク内の水分は水と油でガソリンに混ざらないので、タンクの底に溜まり、底にサビを発生させるのです。
水抜き剤の主成分はIPA(イソプロピンアルコール)。このアルコールは水にも、ガソリンにも溶ける性質を持っていて、ガソリンに混ぜるとガソリンタンクの底に溜まった水を溶解。アルコールはガソリンにも溶けるため、結果、水とガソリンが混じり、そのガソリンを燃焼させることでガソリンタンク内の水を除去出来る、というのが「水抜き剤」の原理です。
先に書いた通り、鉄製のバイクのタンクは結構錆が発生するので、水抜き剤がその名の通り機能するなら是非使いたいところなのですが・・・。
実際に水が抜けるのか?
さらに調べてみると、実際にイソプロピンアルコールに溶ける水の量というのはごく僅からしく、少量のIPAをタンク内に投入した程度では水はほとんど溶解しないようです。よってガソリン内に拡散する事もなく、水抜き剤としての効果は限定的だと思われます。
詳しく実験されているコンテンツがありました。
引用:二宮祥平ホワイトベース
どうやら水抜き剤に過大な期待は出来ないようです。
タンクの錆をどうやって防ぐのか?
でも、先に書いた通り、バイクのタンクには水がたまりやすく、そのためサビを発生しやすい、というのも事実。タンクに穴が開くところまでは、なかなかいかないとは思いますが、タンクに発生した細かいサビが、キャブレターやインジェクションなどに流れ込むと、不調の原因になったりします。
(実際、昔、僕もタンクの錆が原因で、キャブレターがオーバーフローを起こし、エンジンが不調になった事がありました。)
まあ、最近のバイクのタンクは昔のバイクほど錆びやすくはないと思いますが、愛車を長く、快調に乗ろうと思ったら、タンクの錆予防は対策した方がよりベターなのは間違いありません。
ではどうやってタンクのサビを防ぐのか。
基本はやはり、出来る限りガソリンは常に満タンにしておく、という事。タンク内の空気に含まれる水分が結露の原因なので、タンク内に出来るだけ空気が入らないようにしておけば、結露による水の混入は防げるわけです。
より積極的な方法としては、タンクの内側をコーティングする、という方法があります。
例えば、これはワコーズから発売されている「タンクライナー」。2液式なので、指定の割合で混ぜ、乾燥には熱を加える必要があるなど、少々手間はかかりますが、2液式だけに塗膜も厚く、乾燥後は溶剤にも強いので、サビ防止効果は高いと思います。
もう少し手軽に、という方には「花咲かG タンククリーナー」をお勧めします。
これはコーティング剤ではなく、サビ取剤なのですが、サビを防ぐ効果もあります。僕も実際に使ったことがありますが、その後長らく放置しても、錆の発生を防いでくれていました。
過度な心配は必要ないけれど・・・
マメに乗っていて、頻繁にガソリンを満タンにしていれば、タンク内のサビはそれほど神経質になる事も無いと思います。
けれど、屋外保管で寒暖差が激しい、ちょい乗りが多い、長く乗れない期間がある、等々、思い当たる方は、念のために一度、タンクの中を覗いてみて錆がないか、確認してみる事をお勧めします。