吸排気チューニングの三種の神器
スポーツスターのカスタムにおける「三種の神器」と言われるのが「マフラー」「エアクリーナー」「インジェクションチューニング」。(キャブ機だとキャブレターかな。)
ノーマルのスポーツスターは日本の厳しい排ガス規制、騒音規制に対応するため、吸気と排気を極端に絞り込み、混合気はギリギリまで(ガソリンを)薄くすることでなんとかこの規制をクリアしているそうです。
それを本来の性能に戻す為に必要なのが、十分な吸気効率を持つエアクリーナーと排気効率を持つマフラー、そしてそれらにガソリンの量を合わせるインジェクションチューニングです。
実際、この3つをカスタムすると、ノーマルに比べて数馬力〜数十馬力もパワーアップし、燃費も向上。エンジンの熱も抑えられ、寿命も延びるなどいいことずくめ!・・・らしいです。
まあ無理やり抑え込んでいるものを本来の形に戻すのですから、当然と言えば当然なんでしょうね。
ところがこの「三種の神器」。どれか一つでは十分な効果が得られず、三つ同時にカスタムするのがベスト、というか必須なんだそうです。ノーマルのそれなりにバランスが取れている状態を崩して再構築するわけですから、どれか一つじゃあダメなんですね。
でもこの3つを同時にカスタムするとなると決して安くはありません。
合計すると20万~50万ぐらいかかります。そう簡単に出せる金額ではありません。
我がスポーツスターのカスタム遍歴
僕の愛車のスポーツスター(XL1200CX ロードスター)ですが、最初はずっとノーマルのまま乗るつもりでした。ところが、乗るとこれが猛烈に熱い。買ったのは10月なのに、渋滞にはまったらもう暑くて暑くて。このままじゃ夏はとても乗れません。
そこでまずはインジェクションチューニングをすることに。薄すぎる混合器を適切な状態にすると、エンジンの発熱が下がるからです。(ガソリンの気化熱で熱が奪われるから。)
ただし、ここで早くも決断を迫られます。
インジェクションチューニングにかかる費用は12~15万ぐらい。それで満足するならいいのですが、後からマフラーを換えたりエアクリーナーを換えたりすると、再度チューニングし直しになります。
つまり、マフラーやエアクリーナーはノーマルのまま当面乗るのか、ここで一気に全部変えてしまうのかを決める必要があるわけです。
まあ、悩むまでもなく、まだ車体のローンも払い始めたばかりで、一気に30万円ものカスタム費用を捻出するのは無理。となるとしばらくはノーマルで乗るしかありませんでした。
そんな僕の目の前に現れた救世主(?)が、バンスアンドハインズのFP3(Fuelpak3)です。
スマホを使った手軽なインジェクションチューニングパーツですが、ノーマル用のインジェクションマップも用意されていて、排ガス対策で薄すぎるハーレーの空燃比を手軽に最適化することが出来ます。
これなら後々マフラーやエアクリーナーを変えた時も自分でマッピングを換えられますし、万一それで物足りず、あらためてショップでインジェクションチューニングしてもらうことになったとしても、それまでのあいだ楽しめれば、まあ納得できる価格でしょう。
というわけでFP3を購入し、ノーマルのままマップを入れ替えました。
この作戦は大成功。エンジンのパワーはほんの少しですが向上し、エンジンの発熱はグッと抑えられました。
しばらくこの状態で乗っていましたが、ある日ヤフオクで出物を見つけ、マフラーを衝動買いしました。購入したのはDLIVE製2in1のフルエキチタンマフラー。ハーレー用としては珍しい車検対応のマフラーです。
購入は衝動買いでしたが、前から「もし買うならこれしかない!」と狙いをつけていたマフラーです。
最大の理由は「車検対応」だからですが、「ノーマルのままインジェクションチューニング不要」というのも魅力でした。
実際買って取り付けてみると、音もパワーもノーマルと大差ありませんでしたが、大幅に軽量化され、重いスポーツスターがぐっと扱いやすくなりました。
そしてグットルッキングに!(ノーマルルックも捨てがたいんですけどね。)
加えて良かったのは、FP3のノーマル用マップで特に問題なく走ってくれたこと。
いずれはインジェクションチューニングもやってみたいと思いつつも、すぐにチューニングしなくてもよかったのは費用面で大いに助かりました。
今までハーレー純正エアクリーナーを使ってきた理由
マフラーを換え、FP3でチューニングした我がスポーツスターですが、三種の神器の残る一つ、エアクリーナーは交換しないままでした。
さすがにエアクリーナーも交換してしまうと、ショップでインジェクションチューニングでもしない限り、大きくバランスを崩してしまうんじゃないか、と思ったからです。
エアクリーナー自体はそれほど高いパーツではありませんが(高い奴は10万円近くしますけど)、同時にインジェクションチューニングもやるとなると、併せて20万円近い金額がかかります。
なので、エアクリーナーを換えるなら同時にインジェクションチューニングする費用を貯めてから、、、と先送りしてきたのでした。
エアクリーナー 買うなら今しかない!と思ったワケ
ただ、ここにきて急に「エアクリーナーを買うなら今なんじゃないか」と思い始めました。
理由は3つ。
とにかく
”夏のボーナスが出たら(出るのか?)買おうかなあ~”
ぐらいに思っていたのですが、在庫があるうちに&価格が上がらないうちに、とにかく注文を入れておこうと思いました。
まあ、手に入れたら付けてみて、それでもし調子が崩れたら(インジェクションチューニング費用が貯まるまで)一旦ノーマルに戻せばいいや、なんて考えました。
スポーツスターのエアクリーナーはどれがいいのか
となれば先ずはエアクリーナ選びです。いったいどのエアクリーナーがいいの。
例によってネットや雑誌でいろいろと評判を調べるのですが、エアクリーナーの良し悪しってデザインの話ばかりで、あまり性能や機能については語られていません。
たまに書かれていても
「これはハイフローで、開口部もでっかいから、とにかく空気をいっぱい吸い込める」
・・・みたいな記事ばかり。
そして、
「とにかくいっぱい吸い込めるエリアクリーナーと、とにかく抜けの良いマフラーを組み合わせて、あとはインジェクションチューニングすればバッチリ!!」
なんて書いてあるだけです。
ホントか?ほんとにそんな単純な話なのか??
・開口面積だけじゃなくて、空気の流れとか関係あるんじゃないの?(よくわかんなけど。)
・高回転はいいけど低回転はイマイチとか、その逆とか、そんなのないの?
・吸排気はセットなんだから、マフラーとの相性とかあるんじゃないの?
・・・なんて思いますが、そういう情報にお目にかかったことがほぼありません。
うーん。
結局デザインで選ぶしかないのかなぁ。
僕のエアクリーナー選びのポイント
そこでひとまず、僕なりにエアクリーナを選ぶポイントを整理してみました。
①ノーマルより性能が落ちないこと。
②そのままで車検を通ること。
③雨でも安心して走られること。
④ブローバイガスによるオイル汚れが出来るだけ少ないこと。
⑤見た目がいかつ過ぎないこと。
⑥消耗品が手に入れやすいこと。
⑦値段が手ごろなこと。
こんなところでしょうか。
①ノーマルより性能が落ちないこと。
”そんなのあたりまえだろう?”って言われそうですが、バイクの世界ではノーマルより性能が落ちる ”スペシャルパーツ” っていっぱいあります。
パワーアップするけど低速がスカスカになるマフラーとか、固くてツーリングでは辛いサスペンションとか。
そもそも僕の場合、マフラーがそれなり(車検対応品なので抜けは決して良くない)なので、エアクリーナに大きな性能アップを期待してはいません。ノーマルよりちょっと性能が上がって、ネガが無く、デザインがカッコよければそれで充分です。
②そのままで車検を通ること。
これは主にブローバイガスの処理の話になります。
ブローバイガスはエンジンの外に吐き出せばいいのですが、このガスはガソリンやオイル分を含んでいて有害なので、そのまま大気中に放出することは法律で禁止されているんです。
で、どうするかというと、このブローバイガスをもう一度エアクリーナ内に戻す通路(ブリーザーパイプ)を設けて、再びエンジンに吸い込ませ、燃焼させる、という仕組みになっています。
ところがカスタムパーツの世界では、必ずしもそうなっていないエアクリーナも多いのです。
オイルキャッチタンクを設けてオイル分を減らしただけのブローバイガスを大気に放出したり、小さなフィルターを通してから放出したり。
ひどいのになると、なにもせず、そのまま放出したりしてます。
価格:11,480円 |
価格:1,110円 |
これらはいずれも車検には通りません。したがって車検の度にノーマルに戻すことになります。(戻せばいいってわけではありませんが。)
③雨でも安心して走られること。
ハーレー用のエアクリーナにはエアフィルターがむき出しのタイプが沢山あります。いかにもパワーアップしそうでカッコイイですが、フィルターがむき出しのため、雨が降ると濡れてしまい、エアーを吸い込めなくなります。
そのため、雨が降ってもフィルターが濡れないように被せる「レインソックス」という商品があります。
普段のカッコよさの代償ですから、雨の時にカッコ悪いのはまあ我慢するとして、いざというときに忘れたりしそうで面倒です。
価格:45,799円 |
④ブローバイガスによるオイル汚れが出来るだけ少ないこと。
先ほど説明したブローバイガス。エアクリーナに還元する仕様になっていないと車検に通らないのですが、じゃあなんで車検に通らない方法にしている人がいるのか。
それはエンジンが吸い込み切れなかったブローバイガスに含まれるオイル分が垂れてくるからです。
これはなかなか完全には防げないようなのですが(ノーマルでもカバーを外すと結構オイルでベトベトになっています。)、あまりひどいとオイルがエンジンや車体に飛び散って非常に汚くなってしまいます。
このオイル漏れもエアクリーナによって多い少ないがあるようです。当然、出来るだけオイルが垂れてこないエアクリーナがいいですよね。
⑤見た目がいかつ過ぎないこと。
まあ、これは個人的な好みの問題なので、スルーしてもらえばいいのですが・・・
「エルボータイプ」と呼ばれるエアクリーナーがあります。こんなやつです。
「ヘビーブリーザー」とか「キノコ型」と言ったりもします。
”キノコ型”なんていうとカワイイ感じですが、実際の見た目はすごくイカツイです。
これ、性能的にはいいんじゃないかな、と思うんです。前を向いてて走るとエアが入ってくるから・・・いやいや、そんなことはないと思いますが、「エルボー(肘)」の名前のとおり、 前にパイプが伸びている分、吸気菅が長くなります。
エアファンネルなんかもそうですが、吸気菅は長いほど低回転で、短いほど高回転で吸気効率が上がります。ハーレーはみんな低回転で走るエンジンですから、吸気菅が長い方がいいような気がするんです。(あくまで素人の観測です。)
ただ、あまりにもイカツイです。他人が着けて走ってる分には「かっこいいなあ」と思いますが、正直自分のバイクにつけようという気にならないです。(キャラクター的に合わない。笑)
L字なんでエンジンの振動で根元部分に負担がかかるんじゃないか?とか、万が一転倒したらエアクリーナーだけじゃなく、エンジン本体も損傷するんじゃないか?という心配もあります。
走ってるときに膝が当たらない(多分)のはいいと思うんですけどね。
⑥消耗品が手に入れやすいこと。
アフターパーツのエアクリーナに使われているフィルターは、洗って再利用できるものがほとんどです。とっても経済的でいいんですが、「半永久的に使える」(よくそう紹介されているけど。)というのは眉唾です。やっぱり何度か洗っているうちに汚れが落ちきらなくなるんじゃないかと思うのです。
そうしたときに、すぐに新しいフィルターが手に入ることが重要です。まあ、これは有名どころのメーカー製を買っておけばさほど心配ないのかな。
⑦値段が手ごろなこと。
まあ、これはそのままです。エアクリーナーといえども高いものは10万円近くしますから。
一方でネットで見ると、異常に安いエアクリーナーが売られていたりします。見た目はRSDにそっくりですが・・・
あまり安いのも不安ですね。
僕の選んだエアクリーナーは?
こうした僕なりのポイントを踏まえ、選んだエアクリーナーは何か?
それはコレ。
価格:44,330円 |
ど定番。S&Sのティアドロップ型のエアクリーナーです。
” なーんだ。ここまで引っ張っておいて、結局これかよ。”
・・・まあそうなんですけど。
やっぱり定番というだけあっていろいろいい点があります。
吸気効率で言えばもっと効率の高いエアクリーナーもあります。ただこれでも性能的には十分(との声多し)。
むしろインジェクションチューニングをやっているショップでも「これが一番安定して性能が出る」といって推しているショップも多いようです。
なかには
『エアフィルターがむき出しのタイプはシャシーダイナモの上では性能が出ても、実走行ではエアの流れが一定じゃないので、かえってこういうカバーされたタイプの方が性能が出る。』
という意見もありました。
というわけで、やっぱり(僕が買うには)コレしかないかな、というのが僕なりの結論です。
ティアドロップもいろいろありまして・・・
S&Sのティアドロップエアクリーナーに決めたのですが、調べてみると同じS&Sのティアドロップ型エアクリーナーといっても、実はいくつかの種類があります。
僕の調べた限りでは、今手に入るS&Sのティアドロップエアクリーナーは4種類あるようです。
1.オリジナルタイプ
「オリジナル」とは書きましたが、もっと古い型もあったと思います。あくまで「今入手できるもっとも古いタイプのティアドロップエアクリーナー」という意味です。
91年以降のスポーツスターに対応するティアドロップエアクリーナー。特徴としてはカバーの取り付けネジが3本(3か所)で、「S&S SUPER」と書かれています。
キャブレター車にも対応する、現行で一番古いキット。後述する他のティアドロップエアクリーナーより安価です。ただ、部品点数が多く、自分でとりつけるのはちょっと大変かもしれません。
2.ステルスティアドロップエアクリーナー
価格:52,580円 |
これは同じS&Sのティアドロップエアクリーナーでも 、前述のとは中身がまったく違います。エスアンドエスの新しいエアクリーナーである「ステルスエアクリーナー」は、共通のベースプレートとエアフィルターを採用しつつ、表のカバーだけをいろいろと付け替えられるようになっているのですが、そのカバーのうちのひとつ、ティアドロップタイプのカバーがセットされたキットなのです。
なのでこのデザインに飽きたら違うカバーに付け替えて全く違う外観にすることも出来ます。
価格:42,130円 |
価格:26,744円 |
価格:27,425円 |
表面の取り付けネジが2本で、ロゴは「S&S CYCLE」となっています。
部品点数が少なく、自分で取り付けるのも比較的簡単です。
3.ミニティアドロップ ステルスエアクリーナー
価格:52,004円 |
これは上で紹介したステルスエアクリーナーの一種で、おなじティアドロップながら一回り小さいサイズの「ミニティアドロップ」というタイプです。
スポーツスターの(ハーレーの中では)小さなエンジンにはこのサイズの方がバランスが良く、スポーツスター用としては一番人気になっています。
ただ、オリジナルタイプとちがいカバーの側面に多くの穴が開いていて、エアフィルターがむき出しになっています。(だからカバーを小さく出来る。)
隙間から見える赤いフィルターは、それはそれでカッコイイですが、雨には弱くなってしまいます。(雨天時はレインソックスが必要。)
4.Air Stinger ティアドロップエアクリーナー
価格:58,300円 |
最新のティアドロップエアクリーナーがこれ。「Air Stinger ティアドロップエアクリーナー」。これもステルスエアクリーナーの一種なのですが、究極まで吸気効率を追求した結果、ティアドロップカバーの真ん中にも穴をあけ、そこにもフィルターを付けてエアが吸えるようにしています。
まあ、確かに吸気効率はいいんでしょうけれど、真ん中のフィルター部分がなんか菊の紋章のように見えて、僕的にはあんまり・・・。果たしてここまでしてティアドロップである必要があるのか?という気がしてしまいます。
今後これが主流になって、従来のオーソドックスなデザインのティアドロップが手に入りにくくなったら困るなあ・・・。実はこれが僕が早くエアクリーナーを交換しようと思った3つ目の理由なのです。
***
というわけで、僕が買ったのはもちろん2番目の「ステルスティアドロップエアクリーナー」。
デザインがシンプルで雨でも安心。取り付けも簡単。ツーリング派の僕が選ぶならこれしかない、と言うわけです。
もし飽きたら違うカバーに付け替えもできるしね。
S&S ステルスエアクリーナーの取り付け
というわけで、「ステルスティアドロップエアクリーナー」ネットで購入しました。
ネット通販でポチっとすると、全く待つこともなく(笑)、注文した翌日にはものが届きました。
ボーナスはまだ出てませんが・・・
というわけで、エアクリーナーの取り付けについては次回。
この話つづきます。